ガタゴトするのは、大型ゴミが積んであるトラック。 大学進学を機に都会で暮らしていたのだが、田舎に帰ることになった。 田舎に帰るのは、家業を手伝うため。 これは言い訳。 本当の理由は、結婚をするつもりだった彼女にフラれたから。 失恋で、スグに田舎に帰る気になれたわけではなく、未練タラタラ。 トラックに積んであるのは、彼女と一緒に選び買った家具や電化製品。 新品で買ったため、家具などに付いたキズは、どれも彼女との思い出。 私に「トラックに乗せて良い?」と声を掛けてくれたのは、大型ゴミなどを回収する業者さん。 業者さん、「一人で運べますよ」 私、「いえ、手伝います」 私がトラックに積むのを手伝ったのは、彼女との思い出があるモノを、業者さんに傷付けられたくないから。 業者さん、「彼女と住んでたの?」 私、「・・・はい」 業者さん、「そうか」 私、「・・・」 業者さん、「僕も学生の時は同棲をしていた」 私、「同棲をしていた人とは、どうなりました?結婚をしましたか?」 業者さん、「結婚はしなかった」 私、「どうして?」 業者さん、「別々の道を歩むことになったから」 私、「・・・」 私が大型ゴミなどを回収する業者さんのトラックに乗せてもらったのは、彼女と住んでいたアパートを引き払い田舎に帰るため。 トラックに積まれた彼女との思い出の品は、トラックが揺れる度にキーキーと軋み、悲鳴のように聞こえる。 駅まで送ってもらう間、何処かに彼女がいないか探した。 彼女からのメールが届いているかもしれないと思い、何度もスマホを確認した。 トラックの軋む音がしなくなったのは、駅に着いたから。 私、「ありがとうございました」 業者さん、「荷物はちゃんとやっておくから」 私、「お願いします」 業者さんが、大型ゴミのことを荷物と言ったのは、失恋した私への配慮。 彼女との思い出の品を処分できたことで、田舎に帰った私は、新たな道を歩むことが出来た。