父親の思い


アパートを経営していると、モノが溜まる。 私が高校生だった時 私、「捨てれば良いのに」 父親、「ダメだよ。取りに来るかもしれないから」 私、「取りに来た人なんて1人もいないじゃない」 父親、「そう言うなって」 溜まるモノは、家賃を滞納したアパート住人のもの。 私、「冷蔵庫とかは、売ってお金にすれば、未回収の家賃にあてられるじゃない?」 父親、「冷蔵庫が思い出の品だったらどうする?勝手に処分されたら悲しいだろ」 私、「家賃を滞納して退去したんだから仕方がないじゃない」 父親、「好き好んで退去したわけじゃないよ」 私、「そうだけどさー、これらのモノを保管しておくのに、一部屋潰してるのだから損じゃない?」 父親、「損得勘定だけで物事を判断したらダメだよ」 私、「???」 大学を出て社会人になると、家にトラックが停まった。 トラックから降りたのは、粗大ゴミや大型ゴミを回収する人。 私、「住人が置いていったモノを業者さんに持ってってもらうの?」 父親、「そうだよ」 私、「どうして?」 父親、「どうしてって、お前だって言ってたじゃない、家賃を滞納して退去したんだから、置いていったモノを処分するのは仕方がないことだって」 私、「言ったけどさー・・・」 社会人になると、世の中、損得勘定だけでは無いことに気付き始めていた矢先のことだった。 10年分の粗大・大型ゴミは、業者さんの手に掛かると、30分足らずでトラックに積み込まれた。 今まで大型ゴミ等が置いてあった部屋は、貸し出すことになると 近所の人、「代替わりだな」 私、「えっ!?」 近所の人、「君がアパート経営を引き継ぐのだろ?」 私、「そんな話は聞いてません」 近所の人、「君に引き継がせるために、住人が置いていったモノ(大型ゴミ等)を処分したらしいよ」 老いたせいか、父親が少し小さく感じた。


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